千葉市鍼灸マッサージ師会

日刊大衆の記事より、

悪質施術が横行!「危険なマッサージ」の見分け方

2016-03-06 [週刊大衆03月07日号]




 肩や腰のコリをほぐすつもりが、逆に健康を害することも。悪質な施術に騙されないよ
う正しい知識を身につけよう!


 最近、足裏マッサージや○○式マッサージ、あるいは整体、カイロプラクティック、手
揉み、ツボ押しなどの看板を掲げる店が街のあちこちにできている。2〜3000円の手
頃な料金とあって利用したことがある方も多いだろうが、全国の消費者センターでは、「
こうした店でかえって体調を崩した」という相談が増加している。まずは、そのいくつか
を紹介しよう。

 神奈川県に住む60代の男性は健康ランドでマッサージを受けた。ところが、マッサー
ジの後に腰や脚に痛みが出て、歩くこともできない状態になった。翌日、整形外科を受診
したところ「脊椎管狭窄症(せきついかんきょうさくしょう)がマッサージで強く押した
ため痛みが出た」と診断された。男性はこの治療に1か月かかり、その間、仕事もできな
くなった。マッサージ店に苦情を言うと、「もともと病気があったのだから(病院の)治
療費しか出せない」と言われた。その後、施術者がマッサージ治療の免許を持っていない
ことを知った。店側は「マッサージではなくボディケアだから、免許は必要ない」という
対応だった。

 東京都在住の40代女性は、中国式マッサージの店で施術を受けた。ところが、帰宅す
ると体がだるく、寝るときも腰が痛くて寝返りも打てなくなってしまった。翌朝も腰を伸
ばすことができないほど痛かったので店に連絡すると、もう一度来て施術を受けるように
言われた。再度施術してもらったが、今度は脚にしびれを感じた。マッサージ店に症状を
伝え、施術代を返金してほしいと伝えたが、「こちらは間違いなく、きちんと施術してい
る」と言われた。

 接骨院でカイロプラクティックのコースを受けた東京都在住の30代女性は、施術後、
胸が痛くなったため、整形外科病院でレントゲンを撮ってもらったところ、肋軟骨(ろく
なんこつ)の負傷との診断。その後、めまいなどを感じたため、再度、病院で診てもらう
と、頸椎(けいつい)捻挫と診断された。これで体調もおかしくなり仕事も辞めざるをえ
なくなった。弁護士や保健所などにも相談したが、「因果関係がはっきりしない」と言わ
れ、保障は受けられなかった。
 体の不調を治そうとマッサージを受けたのに、まさに“揉んだり蹴ったり”。いったい
、なぜ、こんなことになったのか?「実は最近、資格や免許もない素人同然の人が施術を
する店が増えているんですよ」 こう説明するのは、さいたま市の武井鍼灸院の武井重樹
院長だ。

 ちなみに、鍼灸治療院の看板を掲げる武井院長は≪はり師・きゅう師≫の国家資格(免
許)を持っている。また、マッサージの場合は≪あん摩マッサージ指圧師≫、接骨院(整
骨院)なら≪柔道整復師≫の国家資格が必要になる。ところが、医療ジャーナリストの牧
潤二さんによると「現状は、こうした資格を持っていなくても手技による“治療”ができ
る店は簡単に開業できる」という。「マッサージは、もともとフランスで生まれた手技療
法で、厳密に言えば≪あん摩マッサージ指圧師≫の資格を持つ人しかできないのですが、
実際はタイ式マッサージやオイルマッサージなどの名称で営業しているんです。いってみ
れば、無資格治療なんです」(前同)

 こうした店には資格認定証や修了証を掲げているころもあるが、「しょせんは民間資格
」(同)だ。これは、カイロプラクティックや整体も同じ。前述した3つ以外は、法制度
の観点からすると“無資格治療”ということになる。「私たち鍼灸師や、あん摩マッサー
ジ指圧師、柔道整復師は3〜4年、専門学校や大学に通い、骨格や筋肉の構造や経絡など
について基礎から学びます。ところが、いわゆる街のマッサージ屋の中にはこうした基礎
医学を学んだり、研修をすることなく施術している所があるのです」(武井院長)

 あるマッサージチェーン店の従業員募集サイトの要項を見ると、こんなことが書いてあ
る。≪マッサージなどの経験がまったくない素人の方も心配いりません。18日間の研修
を受けると(業界団体が発行する)修了証が授与され、その後、店舗に配属されて働くこ
とができます≫ たった18日間研修しただけで、客の体を扱うのだから恐ろしい。「マ
ッサージ店は開業するとき、ベッドを揃えればいいだけで、飲食店のように食材などのコ
ストもかかりません。いってみれば、誰でも簡単に開業できるビジネスになっているので
す」(武井院長)

 こんな状況だから事故が起きるのも当然といえる。国民生活センターにも「施術中に肋
骨を折った」といった相談が少なからず寄せられている。柔道整復師の資格を持つ、東京
・大塚にあるタンタン整骨院の小林敬和院長が苦笑気味に話す。「肋骨の中でも下にある
第11肋骨と第12肋骨は構造上、非常にもろく、ここを下手にマッサージすると骨折す
る危険があります。私たち柔道整復師は、こうした体の構造を熟知しているので強く圧迫
しないのですが、1〜2か月の研修で施術する人は、こんなことも知らないから怖いです
よ」 自分の体に施術する人がきちんとした知識に基づいて施術しているのか、どんな資
格を持っているのかを確認することが、安心への第一歩と言えよう。

 最近は銭湯や温泉、そして家庭にも電気マッサージ器が普及している。だが、これも必
ずしも安全とは言えない。今年1月、国民生活センターはマッサージ器の相談や危害情報
を公開したのだが、2010年から昨年11月までの約5年間で、253件の危害情報が
寄せられたという。

 国民生活センターに寄せられた相談のいくつか実例を挙げよう。

●マッサージチェアを体験したら、腕もみ機能で腕が腫れた(70代男性)
●フットマッサージャーを使っているとき、停止ボタンを押したところ、足が強く挟まれ
たまま停止した。今も足がしびれたような状態が続いている(30代女性)
●販売員に勧められてベッド型マッサージ器を試しに使ったところ、痛みがあった。止め
てほしいと頼んだが、聞き入れてもらえなかった。これで背骨を傷め、直後から、まっす
ぐ立てなくなった。今は寝返りも打てない状態になっている(60代女性)
●首や肩に掛けるタイプのマッサージ器を高齢の母親に使用したところ、肩と胸を骨折し
た(50代女性)

「マッサージ器の相談はここ数年、増加しています。特に骨や関節がもろい高齢者が、家
庭用マッサージ器で事故に遭うケースが増えています」(国民生活センター・広報部) 
前出の小林院長によると、家庭用のマッサージ器で強くやり過ぎたり、長時間使用するこ
とで、筋肉や関節などを傷めるケースが多いという。「マッサージをしながら眠ってしま
い、筋を違えたという患者さんがけっこう多いですね」(小林院長)

 肩や首が凝る人の中には、奥さんや子どもにマッサージをしてもらう方もいるだろうが
、これも事故の元になりうる。「子どもに背中を踏ませて背骨を傷めるケースや、ダンナ
さんに肩を揉んでもらい筋を違えたという方がいます。素人マッサージはしないほうが無
難です」(同) 特に、首のマッサージは危ないという。「首には様々な血管や神経が走
っています。首をきつく揉みすぎて頭痛になったり、最悪の場合、血管を傷め、脳卒中な
どを引き起こす恐れもあります」(前出の武井院長) 肩が凝ったから軽く揉んでもらお
う。本来、気持ちがいいはずのマッサージが、とんでもない事故を引き起こすこともある
。くれぐれも、ご注意を!

出典(週刊大衆2016年3月7日号 双葉社)

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